師走の遠足

12月6日、総勢15人、師走の穏やかな一日を予感するカラッとした日曜日の朝、JR高尾駅から小仏行きのバスに乗った。今日の山行ガイドにはたしか新人歓迎山行と書いてあったと思う。
行先は高尾山、通常の登山道ではなく裏高尾から誰も知らないようなルートを行くという、それがとても楽しみです。満員のバスから「日影」という停留所で降りてすぐリーダーの後をついて林道を歩きだす。落ち葉の柔らかい感触が足裏に気持ち良い。たまにはイイね、この遠足のような感じ!。

       

ほどなく日影沢というキャンプ場について、新人の人たちの紹介があった。どうか、新しい人たちが会山行を通して石神井山の会に良いイメージを持っていただけたらと思う。

しばらく道幅のある林道を歩いているとリーダーが止まって、「さあここから・・・」普通に歩いていたら見つからないケモノ道のような登山道の入り口を指さす。オットー、ドコに道がある?ヒトが通れる?私の嫌いなヤブこぎ?怖いもの見たさに誰かが先陣を切って入って行って「滑るから気をつけて・・・」という言葉を合図に次々とその崩れてできた隙間のような道に入っていく。しかし地図にもない?この道、日曜日の高尾山と言えば人でごった返しどのルートを通っても視界に人のないことはないはずなのに、いまだに人っ子一人会わない。左側の谷筋には多分ケーブルカーの駅があるようでベルの音や人のざわめきがかすかに聞こえてくる。

       

そしてそのざわめきが大きくなると一般の登山道と合流し、いつものにぎわいのある高尾山の広い頂上に出る。でもそこは観光に来る人が多く、ほとんどが手ぶらの軽装、我々のように集団でリュックを担いでいる登山客は少ない。でも誰が見ても展望台からの富士山はとても綺麗、すっかり雪化粧をしていた。イイねー富士山、イツカノボリタイさー。

       

我々は山頂の喧騒を避けて少し足を伸ばしたところにある東屋で昼食の準備だ。大きな鍋にトン汁の用意が始った。人里離れた初冬の山に、あったかいぐつぐつとした鍋の煮える匂いは食べることの楽しみを倍増してくれる。「さーできたよ、カップ持って集まって・・・」ミシュランの山でいただく出来立ての暖かいトン汁は花丸印の星3つ、ごちそうさまでした。

       

妙義山、中間道を行く

北国から雪の便りがちらほら、富士山もいつの間にか雪化粧をしている。無積雪期中心の私の山行も今年はそろそろ終りが近づいた。そんな中、地元の山の会のハイキングに久しぶりに参加した。行先は妙義山上信越道を軽井沢に向かう時左手に見える怪獣の背中のようにゴツゴツした独特の形をしたあの山だ。11月8日(日)石神井公園を朝6時、車3台に分乗して出発し7時半過ぎに登山口近くの道の駅に到着、風も無く穏やかな晩秋の一日が始まる。
妙義神社   
山門の奥が登山道入り口

配られたルートマップを見ると山頂縦走やピークハントではなく、今日は中間道という一般ルートを紅葉を楽しみながらのハイキングである。歩き始めると結構な登りでクサリ場も出てきておよそ1時間で「大の字」という(「大」という文字の鉄骨でできた人工モニュメント=何の意味か解らず)場所にクサリをよじ登って到着。展望が開け眼下に下仁田の町を見下ろし、後ろには白雲山、天狗岳の岩の絶壁がそびえ立つ。急峻な岩肌は中国の古い時代の墨絵に出てくるようなたたずまいを見せている。山道のあちこちで木々は真紅に染まった最後の輝きを見せていた。美しく燃えるような赤だった。
中国の墨絵のような白雲山
紅葉
紅葉を行く

中間道、一般用の登山道とは言えかなりのアップダウンを繰り返す。穏やかな落ち葉の道があったと思えば、スリルのあるクサリ場を何度もよじ登り、長い梯子を登ったり、また奇岩、奇石を造った大自然の造形美に感銘したり・・・変化にとんだトレッキングコースである。途中の岩の下を通る桟道はまるで蜀の桟道や黒部の水平歩道や下の廊下を彷彿させる(少し大袈裟か)


桟道を行く

久しぶりにグループでの山行だった。以前は他の人たちのペースに合わせるのに必死で、見えているのは前を行く人の背中だけ、景色など楽しむ余裕もなく、体力を消耗し食べ物がのどを通らなかった時期もあった。いつの間にか自分の体力に合った山登りをしようと自由でマイペースな単独登山が主体になった。そのかわり行く山を調べ、磁石や地図読みを勉強し、気象についても本を読んだ。そして山の体力をつけるため、いつしかエレベーターやエスカレーターはほとんど使わなくなり歩くことを日常の訓練とした。そして一人で計画をつくり一人で山に登ることが多くなる。今まで家で食事など作ったことはなかったが、山頂で火を使って温めた食事をするようになり、食後のコーヒータイムにも余裕が出てくる。せめて登った証だけでも残したいと思って写真も撮るようになった。山中を一人歩けば危険も伴うだけに十分な準備とスキルアップは不可欠だと思う。
だけど今日の妙義山ハイキングのようにリーダーのもと無心になって仲間と一緒に眺望を楽しみながら歩くのもとても楽しい。山色々、目的色々、登る人いろいろ・・・。

クサリ場の登山者
紅葉の妙義山

穏やかな稜線に魅せられて

10月18日(日)晴れの予報、また例の如く朝4時に光が丘を飛び出した。谷川連邦の西の端っこ、平標(たいらっぴょう)山と仙ノ倉に向かう。月夜野から17号を新潟に向かい苗場スキー場を過ぎるとすぐに登山口があった。この山、名前の読み方さえ知らなかった。サイトで調べてみると登った人の評判がとても良い。それで以前からとても気になっていた。
「エビス大黒を過ぎると景色は一変してなだらかな稜線が牧歌的な風景を漂わせている。仙ノ倉山山頂から西側は一変してハイジの世界!そこにはなだらかなスロープが待っている・・・僕が歩くのを待っている・・・。」と、誰かが書いた山行記がもうすぐ現実のものとなりそうだ。

穏やかな仙ノ倉山への稜線

今は秋、色付いた木々に囲まれた林道を歩き、真新しい山小屋で休憩し平標山に向かう。この登山道は階段の道が多いと聞いてはいたが・・・そう、たぶん7割くらいは木道や階段である・・・単調な階段登りがこれでもか、と続くが美しい仙ノ倉への稜線がその辛さを慰めてくれる。
眼下に平標山の家
もうすぐ山頂
ガスに覆われる仙ノ倉への稜線
山頂記念撮影

しかし晴れわたっていた天気が一転、もう少しで頂上というところで、あっという間に日本海側からガスが上がり、ホワイトアウト状態になってしまった。
仙ノ倉山への稜線歩きをしたくて1時間ほど山頂でじっと待機をしたが、不安定な天候状態に今日は諦めて下山することにした。
時々すっとガスがひくときに現れる仙ノ倉山への稜線上の道や、下山に使った松手山へのルートが、お花畑こそもう終わってしまったが、木々の紅葉がそれに負けないくらいの演出をしてくれた。下山した後もしばらく景色が脳裏から離れない。必ずもう一度来るから待っててくれ、と何度も誓った。


松手山ルートの紅葉

急峻な岩峰を緊張感をもってよじ登って達成感を味わうのも山登りの醍醐味、しかし、この平標山から仙ノ倉、あるいは松手山へのルートは、まるで天空の遊歩道のような穏やかな表情をしている。こんなルートを歩くのも山歩きのもう一つの楽しみだと思う。

いつか花の季節に、谷川岳から長い距離を縦走しこの楽園の稜線にたどり着いてみたいと思っています。

八ヶ岳(赤岳)に中岳道から登る

天気図を眺めていると10月4日の日曜日だけ「晴れ」の予報、山に行く気持ちが高まる。
日曜の朝、暗いうちに家を飛び出し、中央高速道の諏訪南インターを出たのがようやく明るくなり始めた6時前、それから八ヶ岳美術館の前を通り、狭い林道を通って、美濃戸の登山道入り口に着いた。
雲ひとつない青空、一足飛びに秋のど真ん中にやってきたようで、車を降りるときの温度計は10度、肌寒い。
休憩した行者小屋から、大同心、小同心の特徴ある岩塊が間近によく見える。赤岳への直登ルートである文三郎道、地蔵道は避け、少し遠回りになるが階段の無い阿弥陀岳へのルートである中岳道を選んだ。途中、南八ヶ岳連邦を手に取るように眺めながら、途中シカにも出会い、崩れた登山道をう回路して中岳と阿弥陀岳のコルに出る。そして中岳のピークを踏みいったん下ってまた登り返し文三郎尾根道と合流、途中の中岳から見る阿弥陀岳がすごい迫力だ。
行者小屋から
突然鹿が!
横岳その先に硫黄岳
阿弥陀岳

滑りやすいガレ場を少し行くといよいよ山頂直下の鎖場となる。しっかりした岩場なので鎖を使わなくてもゆっくり登れば安全だ。尾根にでて山梨県側の登山ルートを見ると、県界尾根と真教寺尾根が並行して優雅にせりあがってくる、こちらの道も登ってみたいと思う。
赤岳山頂小屋(本当に山頂にあった)のテラスからの360度パノラマ絶景に、いつも思うけど、ただただ「来てよかった・・・」 山頂でお湯を沸かして入れたコーヒーは本当に美味しい、心が我に帰る。
私はいわゆる「山屋」ではない、しかし一般ハイカーであろうが何だろうが、登ってしまえば見えるもの感じるものはアルピニストと同じ、そこには人工的な音のない隔世の空気感がある。
中岳と赤岳が重なり合う
頂上下の岩場
県界尾根と真教寺尾根

午後2時半、横岳への縦走も考えていたが、日の暮れるのが早い晩秋、帰りは階段の多い地蔵尾根を降りる。行者小屋までは1時間で降りたが、そこから南沢を美濃戸に向かったが4時を過ぎたらあたりは真っ暗、ヘッドランプをつけながら車まで急ぐ道中となった。しかし楽しい一日だった、次に来るときは山頂小屋か赤岳天望荘に泊ってゆっくり夕日を眺めたいと思う。

三角点で記念写真
赤岳山頂小屋
天望荘から遠く横岳縦走ルート

お盆、川乗山に登る

光が丘公園通り

ある日、急に山に登りたくなった。なぜそんな気持ちになったか解からない、有名な山に登ろうとか、百名山に挑戦しようという動機ではなく、単純に、今まだ体力が残っているうちに高い山に登りたい・・・と思った。
身体が丈夫なわけでもなく、心臓病の手術で何回か入退院を繰り返し、手や足から取った血管を心臓の動脈のバイパスとして使うことで、止まりかけた鼓動が復活、4年前だった。
最近までシステム屋(コンピュータ)として時代の流れに沿って、画一化しにくいアナログを否定し、全てを数値化することで成り立つ世界に身をおいてきた。ドッグイヤーなどと言って7年かかることを1年でやり遂げようと生き急いだ。そんなスピード最優先の世界から4度目のリハビリを境に遠ざかった。
コンピュータは所詮道具、それによって便利になった分だけ人間らしく生きなければと思う。自分の足(体力)と五感だけが頼りの山登り、辛く、苦しい上り坂に、人の生き方に似ているところがあるのかも知れない。


8月16日、お盆休みの最終日、山に行きたくて朝5時に起きてとりあえず奥多摩方面に向かう。 電車の中で地図を見ながら行き先決定、今日は百尋の滝を通って川苔山(川乗山とも)に行き、下山ルートは大根の山の神から鳩ノ巣駅に降りることにした。
林道をしばらく歩くと細倉橋に着く
解りやすい道標、ここからが山道
沢を何度も渡ります
雨が降ったら渡れない?
奥多摩一の百尋の滝

休日最後とあって朝の日原の鍾乳洞行きのバスはいっぱい、臨時も出ているようだ。
川苔山も川苔橋登山口から細倉橋まで1時間ほどの林道を歩き、百尋の滝までは沢の流れに沿った気持の良い2時間弱のハイキングコース、しかしその先は急登また急登で頂上まで2時間半、標高は1364mだが、標高差が1000m位あり、かなり体力が必要な山である。
下山道の鳩ノ巣駅へのルートは延々と続く杉林の中を歩く。眺望も変化も少ない中、歩くのにうんざりした頃に大根ノ山ノ神の祠が現れた。もうすぐ集落かと思ったがまだまだ道は続いていた。今回はかなり歩いた山行でしたが、地図を見ていると奥多摩には登りたい魅力的な山がいっぱいある。秋の紅葉時期にはもう一度来たいと思う。
山頂で記念写真
雲取山(左奥)が見えます
下山道は展望が無く退屈、やっと眼下に鳩ノ巣集落

北岳・山の会夏合宿

7月30日(木)から8月2日(日)まで、地元の山岳会の夏合宿に参加した。今年は南アルプスの各コースがその舞台となった。夜中に車にリュックを積み込んで中央高速をひたすら西に急いだ。南アルプス街道も芦安温泉に入ると途端に道幅が狭くなる。
車中で仮眠して朝早く、近くで宿泊していた北岳チーム7人と顔を合わせた。雲は出ていたけど明るい空だった。5時ちょうど、芦安から大型タクシーで登山口の広河原に向かう。一般車の規制がありバスとタクシーのみ通行可、約1時間で広河原に到着する。広河原山荘に韓国からの団体登山者のグループが20人ほどいてごった返していた。
南アルプスモニュメント  
広河原山荘
広河原山荘から登り始めると横を澤が流れている、とても冷たい水で雪解け水であることがすぐわかる。白根御池小屋への道(当初の予定)を右に分けてどんどん進む。今日は大樺沢から右俣コースで肩の小屋まで行く。途中何回か小休止をして9時過ぎに雪渓がまだ残る二股に着く。

大樺沢の雪渓
二股からは急登となり、やがて雨が降ってきてレインウェアを着込む。視界の悪い雨の中の歩行が続いた頃、左の足の指の付け根の当りに違和感、そして攣ってきた。しばらく忘れていた痛みが走る。だましだまし歩いていたがかばっていた反対側にも違和感が・・・。結局リーダーと後からゆっくり行くことになってしまった。
グループより1時間遅れでガスの煙る中、青いペンキの北岳肩の小屋が現れたときはとても嬉しかった。テン場には既に先行した皆さんがテントを張り終わり中で休んでいる所だった。
雨の中のテント
夕飯はキムチ鍋
足が故障した割には食欲がありキムチ鍋は美味かった。雨は相変わらず降り続いている。小屋でテレビの天気予報を見たけどやっぱり明日も雨らしい。半分天気は諦めて、とにかく重くなった足が回復するように早めにシュラフにもぐり込んだ。
ご来光
朝日の中のテント場
4時過ぎにあたりのざわめきで眼が覚めた。空が明るい、雲の切れ間から青空を予感できる。明けて来る光の気配を収めたくて写真を何枚か撮った。すぐにリーダーから5時に山頂へ出発するとの指示があり、朝日を浴びながら40分で3193Mに着いた。雲海の彼方に富士山、雲の切れ間からは甲斐駒や鳳凰三山も見え隠れする。興奮しないわけがない、昨日の苦しい雨の中の登りに対してのご褒美だ、いいぞ南アルプス
雲海の彼方に富士山
北岳山荘と間ノ岳
雲に隠れる千丈岳

  
バットレス下のお花畑
コイワカガミ
キタダケソウ

遠い日の谷川岳

海外の登山番組が時々テレビで放送されることがあり、映像がとても綺麗で思わず見入ってしまう。映し出されるガイドも登山者も持っているもの着ているものがシャレていてカッコいい。山小屋だって日本の男女相部屋雑魚寝式と違って個性的で清潔感がありいつか泊まりたいと思う。(もちろん日本にもこじゃれた山小屋もありますが)

最近はいつどの山へ行っても年配者が目立ち、多くがグループで行動している。日帰りハイキングであってもヤドカリのように大きな重そうなリュックを背負い、世間話をしながら元気で歩いている。気になるのは、その人たちが下山して汚れた登山靴のまま電車の中にどかどか乗り込んでくること。そんな山帰りのグループを見て若い人から登山がどう思われるのか心配しているのは私だけ?
でも、若い人の中におしゃれでセンスの良い登山ウェアを着た人が増えてきた。少しでも山が華やぐことは良いことだと思う。立ち居振舞いや所作にカッコよさがあると人は惹きつけらるるもの、格好良く山に登りたいものですね。
雪の残るマチガ沢第一見晴
登ってきた西黒尾根
    

6月27日梅雨の合間、水上に向かった。私の年代には谷川岳と言えば、天神平のスキーと一ノ倉沢の岩壁であり、登山事故の多い魔の山というイメージを持っている。今日は早く着いたのでマチガ沢と一ノ倉沢を見に行く。朝日があたって岩峰がキラキラ輝いていた。ロープウェイの運転時間にはまだだいぶあったので、マチガ沢の駐車場に車を止め、厳剛新道から登ることにした。雪も残っていて、雪渓でスキーを楽しむ人も結構いる。 このルートは雨になれば沢になるような道で、漬物石のような小石がごろごろあって滑りやすくかなり厳しい登山道である。登っては休み、また休んでは登り・・・を繰り返し、途中鎖場をよじ登り、ラクダのコルという場所で西黒尾根に合流する。天神尾根と違い、すべりやすい岩場もありやっと肩の小屋にたどり着いた。小屋近くのお花畑が初夏の日差しを受けて目にしみる。西には小屋の前から始まる稜線がにオジカ沢の頭に伸びている。風も無い穏やかな初夏の一日、のんびり山頂の景色を楽しんだ。下山は雪渓のまだ残る凛とした姿の俎グラを仰ぎみながら懐かしい思い出のある天神平スキー場へ降りてきた。若い日にそこで遊んだ記憶はもうすでに薄れてしまっていたが、名前の懐かしさに遠い日に遊んだ雪の世界を思い出す。

双耳峰トマの耳、オキの耳
オジカ沢の頭から俎グラ
天神平から見る谷川岳